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2020.02.06

建築写真撮影用のカメラ・レンズについて

普段、建築写真(建物の外観、内観)を撮影する際、私はティルト・シフトレンズを使用します。

これはかつて大判カメラで蛇腹を使って画角を操っていたアオリと呼ばれる手法をレンズ単体で可能にするレンズです。フィルム時代から各メーカーが販売していましたが、今現状で販売しているメーカーはキャノン・ニコン、海外だとシュナイダーだけとなってしまいました(サムヤンも一応現行で出していますね)。かつてはマミヤ・オリンパスも作っていましたが今はありません。

レンズの画角の話になりますが、昔は28mmというレンズを35mmフィルム(今でいうフルサイズ)で使うと広角と言われる画角でした。今では広角レンズというと24mmが主流となってきています。更に、超広角というレンズもあり、12mmなんてレンズも出てきています。三脚にのせて撮影していると、下手したら三脚の足が写ってしまうくらい多くの範囲を撮影出来ます。

個人的には28mmが一番好きな画角です。実は広角になればなるほどパースが効きすぎるんですね。四角形の被写体を近くから斜めに撮影すると角が尖りすぎてしまい、現実感を欠いてしまいます。ティルト・シフトレンズは17mmという超広角のレンズと、24mmという広角のレンズがありますが、私はそれらを使い分けて撮影しています。

もう一点、今はデジタル処理でアオリを使った風な写真加工が簡単に行えます。したがって、超広角レンズさえ持っていればティルト・シフトレンズは必要ないのでは、と思う方もいらっしゃるかと思うのですが、実は違います。建築の撮影はカメラを水平垂直に角度をつけず撮影するのが基本です。建物の外観などを撮影する際、それだと写らない場合が多々あります。ティルト・シフトレンズだとレンズを上方向にシフト(ライズ)することで建物の頭まで写せますが、単なる超広角レンズだと建物の頭を写すにはカメラを上方に傾けないといけません。

これをデジタルで後に修正してもよいのですが、写真は構図が非常に重要です。デジタル処理にてこれを行おうとすると建物と空の余白、映る範囲などを決めるのが非常に難しいのです。そういった理由もあってティルト・シフトレンズが多くの建築写真家に利用されています。

ティルト・シフトレンズはシフト機能の他にも、ティルト機能を使用することにより、絞りを変更すること無くピントの合う範囲をコントロールする事ができます。焦点距離の長い90mmなどのティルト・シフトレンズはブツ撮りのフォトグラファーが良く使用しています。

撮影時に写真の完成形を見ながら撮影できる、これがティルト・シフトレンズの利点で、きれいな構図をつくりあげる事に非常に重要な機材となります。